- 上塗りと下塗りの基本的な役割の違い
- 中塗りの意味と必要性は塗料によって変わる理由
- 塗装の塗り回数は3回が必ずしも正解ではないって話
2012年から塗装業界にいるので塗装歴は9年になりました。ここでは塗料の基礎知識について解説します。
どんな塗料でも上塗りと下塗りの、「役割」と「相性」をちゃんと理解していないときれいに仕上げることができません。
よく聞く「3回塗りをしていればOK」というのは塗装の本質ではないのです。
この記事では、基本的なことからマニアックなことまで、初心者向けにわかりやすく解説していきます。
塗料の上塗りと下塗りの役割、中塗りが必要な理由とは?
まずは塗料の基本的な部分からいきましょう。
- 物の保護→金属を錆(サビ)などから守る
- 物の美粧→美しく見せる、価値を高める
- 機能の付与→耐熱や耐火など機能をもたせる
目的を達成するために、外壁に適した塗料を選んでいくんですね。
下塗りの役割
下塗りの役割は、これなら仕上げてOKっていう準備のために塗るもの。
- 防水性をもたせる
- 遮熱効果の付与(補助)
- 錆(さび)を抑制する
- 外壁に浸透し強化する
- 小さいクラックや巣穴を埋める
- 外壁と上塗りの密着性を高める
- 外壁の表面に塗膜を作り吸込みをとめる
上記は「上塗り」にはない効果ばかり。上塗りは外壁の表面を守る役割しかありません。
中塗りの役割
基本的に中塗りという言葉はあまり使いません。一般的な外壁の塗装では、下塗り1回、上塗り2回が基本。
中塗りは3回塗りの真ん中みたいなイメージがありますが、正式には上塗りの密着性を高めるための工程になります。
同じ塗料を2回塗っているなら、上塗り2回が適切な表現です。
例外あり!フッ素塗料は「中塗り専用塗料」がある
フッ素塗料の中でも「汚れを洗い流す効果が特に高い」タイプは、中塗り専用塗料が使用されます。
- 下塗り1回:下塗り塗料
- 中塗り1回:中塗り専用塗料
- 上塗り1回:専用の上塗り塗料
参照:パワーオーデフレッシュF
超低汚染というのは、汚れがつきにくい塗料。そのため、専用の中塗りを使って密着性を高めています。
簡単にいうと、上塗りの効果が高すぎて同じ塗料(上塗り2回)では剥がれる心配があるってことです。
こちらの、外壁に使う上塗り塗料の費用や選び方|DIYにおすすめの塗料も紹介!でも詳しく解説しています。
上塗りの役割
上塗りは外壁の表面をきれいに保つための役割。
色んな効果がありますが、一般的には紫外線から守るために耐候性(たいこうせい)をメインに作られています。
- 防汚:汚れがつきにくい
- 断熱:熱を逃げにくくする
- 防藻:コケなどが発生しにくい
- 遮熱:熱を反射する
- 防カビ:カビの発生を抑える
- 耐候性:紫外線に耐えられる力
上塗りといえば、シリコン塗料が有名ですね。塗膜の1番上の「層」になるのでトップとも言われたりします。
塗装回数は3回だから丁寧ってわけではない
外壁塗装は3回塗りが基本。だけど実は4回塗りや、1回塗りの場合もあります。
重要なのは、なぜその回数になったのかっていう過程です。
3回塗りになるケース
外壁の状態がきれいな場合は3回塗りですね。住宅によく使われていることが多い、窯業系サイディングなんかは3回塗りが基本です。
- シーラー1回:密着性を高める
- 上塗り1回目:適正の量を塗る
- 上塗り2回目:適正の量を塗る
よくある工程ですが、重要なのは下塗り1回で済むレベルの傷み具合ってところ。劣化がひどい場合は、下塗り1回では収まらないケースもあります。
上塗りを2回するのは仕様書を守っているだけの話。2回塗りで性能を発揮する塗料なんですね。
3回塗りは、丁寧というか普通です。
4回塗り以上になるケース
塗る回数が増えるのは「下塗り」の段階です。上塗りは基本的に2回で十分です。
- 下地の吸い込みが多い→下塗り2回
- 下地の状態が悪い→シーラー+下地調整剤
- 下塗りと模様付け→シーラー+弾性フィラーなど
外壁の種類や工法によって変わりますが、共通しているのは、上塗りが2回で仕上がるように下地を整えること。
上塗りを3回しますっていう業者がいたら、ちょっと意味がわかりません。
1回塗りで仕上げるケース
これは意見が別れるかもしれませんが、雨どいは1回塗りで十分でしょう。
- 見た目をキレイにするだけ
- 破損や劣化は塗装では防げない
- 密着性の高い上塗りを使うから
雨どいを塗るのは、外壁がきれいになった場合の見劣りを防ぐためのお化粧みたいなもの。何回も塗るのは無駄です。
なぜなら、水が流れる「中の部分」を塗装しないから。中を塗装したとしても、ゴミや水で剥がれる確率が高いからですね。
雨どいの劣化は水が流れる部分から進みますし、交換しないと根本的な問題は解決しません。金具の痛みや歪みもありますしね。
ケレン→1回塗りの低予算で収めるほうがコスパがいいですよね。
塗料の成分や基礎知識について
基礎的な部分を簡単に解説します。覚えておくと塗料選びの役に立ちますよ。
塗料の成分
塗料は4つの成分で構成されており、缶の中ではそれぞれ分離しています。
「使う前に混ぜろ!」というのは、分離している成分を均一にするためなんですね。
- 顔料→「色」を与える成分、サビ止め顔料など
- 樹脂→主成分、よく聞くシリコンやウレタンなど
- 添加剤→作業性を向上させる、ダレ止めや消泡剤など
- 溶剤→塗料に流動性をもたせる、水性塗料は溶剤が「水」
塗料はそもそも「固形」の成分が多いので、「溶剤」がドロドロにする役割をもっています。
長期の保存ができないのは、溶剤が揮発して固まってしまうからですね。
塗料の種類
塗装で使うのは大きく分けて3つあります。
- 水性塗料→水で薄めるもの
- 弱溶剤→塗料用シンナーで薄めるもの
- 強溶剤→ウレタンシンナーで薄めるもの
外壁で使うは水性塗料がメインですが、金属系は弱溶剤の塗料が多く使われていますね。
塗料の強度はやはり水性→弱溶剤→強溶剤の順に高くなります。強溶剤が外壁に使われることは基本的にありません。
家具や車の塗装なんかは、強溶剤のウレタン塗料がよく使われています。
1液型と2液型
塗料には1液型と2液型があり、2液型のほうが性能は高くなります。
- 1液型:そのまま使える塗料
- 2液型:主材と効果剤に分かれている塗料
最近は水性塗料の性能もかなり高くなってきましたが、外壁塗装でも信頼できるのは、2液型の弱溶剤です。
まとめ:目的によって下塗りは変わり、上塗りを塗る回数も変わる
塗料はそれぞれ違いはありますが、外壁をきれいに保つためには正しい使い方をしなければいけません。
- 下塗りと上塗りは基本が違う
- 塗料はあらゆる性能を付与する
- 塗る回数は3回が正解ではない
外壁の劣化がひどい場合は、根本的な問題を解決しなければいけません。どんな高い塗料を使っても結果は一緒です。
キレイな状態を保つのが塗装の目的。ボロボロに物に塗っても意味がないんです。
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